2008年5月26日月曜日

TEACCH5デイトレーニングセミナーに参加してきます

今の職場に就いて6年目。とにかくがむしゃらに発達障害児にとって良いと思ったことは何でも実践してきました。

そのなかで特に有効だったのがTEACCHでありABAでした(これからはそこにPECSが入ります)。それらのメソッドを導入することで、今では就職当時から比べると倍の利用者数なのに、あきらかに問題行動が減っています。はっきりと子ども達が落ち着いてきているのです。専門的なアプローチが功を奏していると言えると思います。

一方で僕として限界を感じるのが、系統的なトレーニングを受けていないので、何か一つ寄って立つような柱となる専門的技術が足りないということです。今では、例えばTEACCHに関する書籍も増え、構造化に役立つ情報もたくさんあり勉強しようと思うといくらでもできる環境にありますが、ではそれでTEACCHアプローチを「使える」レベルに達するかと言えばそんなことはないのです。昨年ノースカロライナに行って痛感したのが、現場の人たちの専門性がとても高いことです。みなさんしっかりとしたトレーニングを受けており、そこがぜんぜん違うのです。

そんななか、今年もNPO法人それいゆでTEACCH5デイトレーニングセミナーが開催される情報が入りました。佐賀だから遠いし、お金もかかるし、なにより家族に負担がかかるし・・・ということで二の足を踏んでいましたが、でもやはりしっかりとしたトレーニングが必要!と参加することにしました。

なにより今年のTEACCH5デイには、昨年のノースカロライナTEACCH視察でお世話になったシャーロットTEACCHセンターのディレクターであるジョイス・ラム先生がいらっしゃるということです。当時、現地に留学していた梅永先生曰く、メジボフ博士一押しの先生ということでした。またシャーロットに留学されていた方がラム先生の観察眼の鋭さを「めっちゃ、すごい!」とおっしゃっているのがとても印象的でした。そのラム先生がいらっしゃるのだから、ここで参加しないと一生後悔すると思い、家族には本当に申し訳ないけど参加申し込みをすることにしたのです。

過日、それいゆから了承のメールが届き(いちおう参加には審査があったけど、無事通りました)ました。これで一からTEACCHについてしっかり学べます。なにより楽しみなのが、全国から現場の人たちが集まり、交流できるということです。ぜひこの経験をまた現場に活かしていきたいと思います。

2008年5月21日水曜日

「自閉症の兄とともに」

自閉症など発達障害のある子ども達の支援を考えたとき、家族へのサポートが不可欠であることは当然ですが、きょうだいへの支援も本当に重要だと思います。しかし、その重要性が分かっていながらなかなか本人達へ関わることで手一杯になり、きょうだい支援には全く手がつけられないのが現状でした(ようやく今年はきょうだいへのささやかな関わりが実現しそうですが)。

そうしたなか、ネットでたまたま繋がりができた方が「自閉症の兄とともに」という本を翻訳されたそうで、とても興味深かったのでここでご紹介します。

「自閉症の兄とともに」は自閉症の兄をもつ弟(漫画家)と妹(編集者)が書いたアメリカの本で、そのご家族の50年が描かれているそうです。

そこにはアメリカの自閉症支援の歴史も詰まっているそうで、日本よりはるかに進んでいると思われるアメリカでの支援の現場(施設での虐待もあるそうです)もよくわかるのではないかと思います。

訳者、新宅美樹さんの思いをご紹介すると

自閉症の兄デイビットを中心とする家族の歴史を、編集者の妹と漫画家の弟が
 1章ごとに文章とマンガで「カラシック家」をつづったもの。
 本の構成という点からも、なかなかユニークですが、これにはしっかり意味があります。
 そのあたりは著者の日本語訳へのメッセージに書かれています。

 思い返せば2年前、友人の子どもが高機能自閉症と診断されました。
 何か友人の役に立ちたいと思い始めた頃、アメリカのテレビ番組をを通じてこの本のことを知り、
 すぐに原書を取り寄せ、読み始めました。

 その後、この本が日本語に翻訳されていないことを知ります。
 きょうだい支援などのホームページでも紹介されているのに、翻訳されていないなんて・・・
 ぜひ日本語に訳して、日本の同じような境遇の人たちに、
 そしてご両親や医療・療育・福祉の関係者の方々に読んでもらいたいと思い
 出版してくれる会社を探すところから始めました・・・」

ということで、その「自閉症の兄とともに」が6月1日に出版されます。当事者の書かれた本は増えてきましたが、きょうだいが書かれたというのはまだ少ないかなと思います。興味のある方はぜひお読みくださいね。

2008年5月20日火曜日

障害のある方への職業紹介(ハローワーク)が過去最高になったそうです

厚労省の発表によると、ハローワークにおける障害のある方の就職件数が過去最高になったそうです。

個人的に注目したいのが、発達障害者、高次脳機能障害者、難病者等その他の障害者(対前年度比489人(54.6%)増)の新規求職申込件数が増えていることです。
(※この調査はおそらく障害者自立支援法に基づいているので、障害区分がいわゆる3障害「身体障害」「知的障害」「精神障害」になっており、「発達障害」は「その他の障害」になっていることに注意!!さらにややっこしいことに、ここでいうところの「発達障害」は、「知的障害」と区別されていることからおそらく知的障害をともなわないいわゆる高機能自閉症やアスペルガー症候群にあたると思われます)

なかでも「その他の障害」の発達障害は、平成10年では新規求職申込件数が300弱だったのが平成19年には1400件と3倍以上になっており、発達障害のある方がハローワークに結びつくケースが急激に増えていることが分かります。

また、平成17年を境にそれまで400件前後で推移してきた新規求職申込件数が急に倍近くなっていることを考えると、平成17年施行の発達障害者支援法の影響があったことは明らかで、やはりとてもインパクトの大きい法律だったのだなと思いました。

一方気になるデータとして、実際に就職したケースを率にすると平成19年で約26%と、ほぼ4人に1人の割合しか就職まで結びつかなかったということになります。ちなみにこの率は他の3障害と比べて最低の数字になっており、あらためて発達障害のある方の就職が如何に難しいかが分かります。こういうデータを読むと、取り組むべき課題はまだまだ多いなと実感します。

他には、ページの最後の方に、ジョブコーチのシステムや最近注目の「トライアル雇用」についての説明がありますので、それだけでも大変有益な情報ですよ。ぜひアクセスしてみてください。

2008年5月18日日曜日

遠足無事終了

今日は本当に暑かった!だけど子ども逹は元気に鎌倉の源氏山を歩きました。ボランティアさんもしっかりついてくれて、本当に安心して遠足を楽しむことができました。

こうやって子ども逹が楽しめるのもボランティアさんのご協力のおかげです。今回は社会人のボランティアさんが多かったのですが、皆さん筋肉痛にならないといいですね。ご協力いただいた皆さんに感謝です。

今日は遠足

なのです。

以前の春の遠足は1回でやっていたのですが、参加者がボランティアさん含めて80人を越えてくると、さすがに安全確保の面からも運営が難しくなってきたので2回に分けるようにしたのです。これでずいぶんと余裕ができました。(それでも50人くらいいるけど)

今回は子どもたちを引き連れて鎌倉に行ってきます。みんなで乗る湘南新宿ラインは鉄ちゃんたちに魅力的!

とにかく怪我と迷子がないように、気をつけて行ってきます!!

2008年5月17日土曜日

おすすめ!ネットワークの作り方レシピ

今日は、上智大学総合人間科学部社会福祉学科の島津望先生が、うちの相談室を見学に来ていただきました。

ちなみに、先生の著作です。



島津先生は、医療現場でのネットワークやマネジメントがご専門です。以前上智大学でのスーパービジョン勉強会に行ったとき先生のお話をお聴きして、「今、うちの施設で必要なことはマネジメントだ!」とピピっときたのです。それで思い切ってその場で名刺交換をしたのが先生とつながるきっかけでした。


ざっと施設の概要、組織、子ども相談室での活動内容などご説明しました。子ども相談室での発達障害児への個別支援や視覚支援はかなり力いれて説明したのが功を奏したのか(?)、先生にもずいぶんと興味をもっていただけました。

組織論についても、さすがは日本各地の医療現場など視察されている先生なので、うちの施設の問題点や課題と対処法を的確にアドバイスしていただき、とても興味深い時間となりました。もうほとんどコンサルテーションしてもらった感じです。

その先生との話し合いのなかでも、ネットワークに関するご指摘はとても興味深かったです。

僕自身、地域の福祉センターや学校、行政などとどうやって有効なネットワークを構築していくか、悩んでいました。確かに特別支援教育も始まり「連携」が声高に叫ばれるご時世ではありますが、実際にはなかなか有効にネットワークが機能していない、特に僕たちのような民間の支援機関と公的機関との連携がまだまだなように感じていたからです。

そこで島津先生が指摘なさったのが「ゆるやかな繋がりの大切さ」です。

先生はミルグラムの「6次の隔たり」「弱い絆の強さ(strength of weak ties)」を挙げられ、意識を同じくする人同士がインフォーマルにつながることの方が意外にも強いネットワークを作るということを指摘されました。

例えば広島の尾道には「尾道式」と呼ばれる地域医療連携体制があり、地域の医師会が中心となって病因や福祉を巻き込んだネットワークを作り上げていったそうだが、その背景には医師会で昔から続いていた「俳句の会」での個人的な繋がりから広がってきたのだそうです。厚労省も注目する「尾道式」ネットワークが実は俳句の会をきっかけにしていたというのが、意外だけど納得という感じです。

ということで、先生がお勧めするネットワークの作り方は、「とにかく意識の高い人同士がまず集まってみよう」ということで、具体的には勉強会がとてもお勧めとおっしゃっていました。勉強会をすることで地域にどんなスキルをもった人がいるか分かりますし、個人的な繋がりに結びつきやすいということです。成功したネットワークのきっかけが勉強会だったというケースは多いそうなので、かなり有効な感じですね。実際、全国で発達障害の勉強会が始まっていますが、ネットワーク作りという視点からみると、とても理にかなっているというわけなのです。

要はネットワークや連携は待っているのではなく、必要なら自分で作ることのほうが近道ということですね。勉強になりました。ぜひ地域での勉強会を企画してみたいと思います。

2008年5月12日月曜日

勝間和代さんの情熱大陸

お金の専門家であり、3女の母であり、ロードレーサー乗りであり、世界で注目される女性50人のうちの一人であり・・・

そんな勝間和代さんが情熱大陸に出演されました。

僕は双子が生まれてから、どうやったら仕事と家庭を両立できるか?と考えてきました。そして勝間さんの本に出会い、僕の生活スタイルを随分と変革することができました。いわば僕にとって勝間さんは、究極のライフワークバランスを実践するメンター(お師匠)と言えるでしょう。

そんな勝間さんの言葉で一番印象に残ったのが

「子ども達が日本にいてうれしい日本にしたい」

でした。

日本はどんどん競争力が落ちてくる、環境も悪くなる、こんな世の中にこの子達を生んで良かったのか・・・と奥さんと話し合ったこともありますが、そうであればやはり私たちが子ども達に残しておきたい世の中にしていくことが大事なのでしょう。まだまだ頑張っていきたいと思います。

2008年5月11日日曜日

梅永雄二先生の「自閉症の人の自立をめざして」

今週読んだ本です。



昨年、ノースカロライナのTEACCH視察に行ったとき、現地で留学されていた梅永雄二先生の最新作です。写真や具体的なケースがたくさん詰まった、最新のTEACCH情報になっています。これを読むと、TEACCHが単なる自閉症の療育メソッドだけにとどまらないのが良く分かります。個人的にはノースカロライナの風景がたくさん載っていて、なんだかなつかしくなりました。ぜひご一読を!

2008年5月10日土曜日

佐賀県で全国初の発達障害児対象のフリースクールが実現

すごいです。佐賀県!

発達障害のある小中学生を対象としたフリースクール「フリースクールSAGA」を、佐賀県が全国自治体としては初めて設置したというニュースが入りました。

運営を委託されたのは、ご存じNPO法人それいゆです。さすが服巻先生です。あったらいいな、という支援体制をしっかり作り上げます。本当にすごいことですね。

さらに驚くのは、自治体と協力して実施されていることです。このあたり行政とのコラボレーションを積極的に進めるTEACCHと同じ哲学に基づいていると思います。一つ一つ実績を積み上げることで、行政の理解と協力を得てきたのですね。「行政は敵だ!」なんて言っている古いタイプの民間福祉施設とは、このあたりが全然違いますね。

ちなみに「フリースクールSAGA」は定員が9名だそうで、授業時間を15〜20分単位で短くすることで集中できるように工夫したり、個別指導計画に基づいて訓練を行うなど発達障害の特性に合った対応が当然のごとく行われているそうです。期間は6ヶ月となっていますが、その期間の利用料は無料だそうです。まさにTEACCHの理念が佐賀で花咲いています。詳しくはネット版産経ニュース佐賀県のホームページをご覧ください。

2008年5月8日木曜日

歩けるのなら、歩いてください

ゴールデンウイークも終わり、日常が戻ってきた感じですね。今年の連休は短かったこともあり、我が家では実家の広島に帰っただけでした。

子どもがいないときには広島に飛行機で帰るなんてどうということもなかったのですが、双子が生まれてからはちょっと地下鉄に乗って移動するだけでも一大事になりました。我が家の双子バギーは戦車のようにとてつもなくデカイので、移動するのが本当に大変なのです(あまりのでかさにたいていの人たちが振り返ります。その分、周りの人が圧倒されてよけてくれるので「そこのけ、そこのけ」で進みやすいとも言えますが・・・)

要するに、双子とバギーで移動する時、僕たちは社会のバリアに直面することになります。一時的に「障害者(正確には障碍者)」となるのです。こうして双子の親になって初めて、世の中にはずいぶんとバリアが多いなと実感することになったのです。

なかでも大変なのが階段の移動。もちろんバギーを持ち上げて階段の上り下りはできません。小さなバギーならなんでもない2段でさえ超えられないのです。だからエレベーターがとても大事になります。

確かに世の中のバリアフリー化はめざましく、公共交通のエレベーター設置度はとても上がってきました。その分、移動も昔と比べてずいぶんと楽になったと思います。

しかし、そのようにせっかくつけたエレベーターも、しっかり歩ける健常の人たちが満員でのっていて何らかの障碍を抱えている人が入れなくては、まったく使い物にならないのです。ゴールデンウイーク中は移動する人が多いので、なんどもエレベーターを待たなければいけませんでした。これでは何のためのエレベーターか分かったものではありません。「エレベーターが必要」と「エレベーターは便利」とはずいぶんと違うのです。「ハードウエア」としてバリアフリーになっても、それらを利用する「ソフトウエア」としての人の問題があると感じました。

発達障害の世界でも、特別支援教育や発達障害者支援法など制度的な整備は進んできている印象がありますが、実際にかれらや家族が生きやすくなったとはまだ言えないように思います。その背景には、制度や施設などの「ハードウエア」だけでなく、それらを利用する「ソフトウエア」の問題も同様に大きいですね。

2008年5月1日木曜日

Google的療育とアップル的療育!?

最近読んだ本で個人的にとてもおもしろかったのが、「アップルとグーグル 日本に迫るネット革命の覇者」です。



僕のことでいうと、世の中にまだWindowsというものがなくてMS-DOSでパソコンが動いていた頃からのMacユーザーでして、自分でいうのも何ですが、MacファンというよりもMacカルトと言っていいくらいAppleに忠実なユーザーです。

一方のGoogleはというと、日本ではまだまだYahooに後塵を拝していますが、その検索精度だけでなく、Gmail、iGoogle、カレンダーやオフィスソフトまで、僕にとってはGoogleのないネットはありえない状況になっています。

これらシリコンバレーを代表する企業の両者を比べると、なかなかおもしろいことが見えてきます。

アップルはすばらしいデザインと機能性を併せ持った製品を開発し、それを販売することで利益を上げています。一方のGoogleは、ネットそのものの環境をより整理し誰もが使える技術を無料で配布しています。そしてユーザーからはお金を取らない代わりに、広告収入で利益を上げているのです。

いわば、Googleが水道だとすると蛇口がアップルであり、アップルがスポーツカーであればGoogleが大衆車であり、「思考のための道具」がアップルであるとすれば「思考するウエッブ」そのものを目指しているのがGoogleであると言えるでしょう。

ちょっと強引かもしれないけど、僕のライフワークである発達障害の世界に話を戻すと、「アップル的」か「Google的」かでずいぶんと療育のマネジメントが変わるのではないかと思うのです。

というのも、民間の行動療法やその他の先進的で個人負担の高い療育はその技術力を売りにしているわけで、その意味でアップル的と言えるかもしれません。高くても内容がよければ利用者として満足でいるのです。

ではGoogle的な療育はというと、僕はノースカロライナで実際に機能しているTEACCH(方法論ではなくシステムとしてのTEACCH)はとてもGoogle的であると思うのです。

つまり、ノースカロライナにおけるTEACCHは、発達障害をもつ州民であればだれでもほぼ無料で使えるサービスなのです。そこには「障害程度区分」なんてなく、発達障害のある人たちは生まれたときから家族が望めばTEACCHのサポートが得られ、知的能力に関係なく生活や就労の支援が受けられるのです。そしてそれらのサポートが無料で提供できるよう、政府や州と連携し、企業からも多くの寄付を集めているそうです。これはGoogleのビジネスモデルとそっくりですよね。

もう一つTEACCHの特徴を挙げるとすれば、個人にダイレクトに行うサポートももちろん重視していますが、それよりもむしろTEACCHの哲学やメソッドを広め、社会全体を変革しようとする気概をTEACCHスタッフから感じることです。言い換えるとすれば、TEACCHが目指しているのは「自閉症の理解」であって「自閉症の治療」ではないということです。このあたり、ウエッブそのものを変革しようとしてきたGoogleの理念に通じるものがあると感じます。

最近では自閉症スペクトラムのある方々は全人口の1%を超えると言われる報告が多くあります。ADHDやLDも含めた発達障害はというと、文科省の調査では6%を超えます。技術力は大事ですが、あまりに高価だとどんなに良い技術でも普及していきません。発達障害のある人と家族の福祉を考えれば、無料で幅広く関わることができる、いわばGoogle的な療育が日本にも求められているように思いますが、いかがでしょうか。