2008年7月14日月曜日

先生の訪問

今日は、通所生の学校の先生がわざわざ相談室に見学に来てくれました。なかなか最近の先生方はお忙しいので民間の療育機関までいらっしゃることはあまりないのですが、ありがたいことです。連携に大事なのは、やはりまず顔合わせなんですね。

学校との連携が叫ばれていますが、なかなか実際には難しいところがあって、うちのようなマイナーな相談室は電話の時点で門前払い、なんてこともありましたっけ(うちの力量も足りなかったのですが・・・)。

だけど以前と比べると、今の方がはるかに風通しが良いように思います。もちろん人間のやることですからいろいろなことがありますが、今の方が問題意識の高い先生が増えてきている気がします。だからこそ、理解のある先生とどちらかというと理解の足りない先生とのコントラストがよりはっきりしてきたようにも思います。いずれにしても、学校の先生にとっては大変な時代ですね。

僕の親父が教員だったこともあり、昔は「先生」に対して無条件に嫌悪する時期もあって、「先生なんてよばれる職業には就かない!」と公言していたものですが、なんの縁だか今頃になって「せんせい」と呼ばれる立場となりました(個人的にはまだ馴染みませんが)。

もうかつてのように先生を毛嫌いすることはありませんので、どうぞ学校の先生方、仲良くしましょうね。

だけど、なんやかんやと外部だからといって学校に入れてくれなかったら、文科省が作成した「個別の教育支援計画」を盾に乗り込んでいきますよ!

なんてね。

(もちろん冗談ですよ。小心者のムカイはそんなことしませんので、仲良くしましょうね。)

2008年7月13日日曜日

類は友を呼ぶ〜最近のまとめログ〜


本当に久しぶりの更新となりました。最近は夏に向けてのいろいろな準備など、ちょっと気持ちに余裕がなく、ブログから遠ざかっていました。また少しずつ書き足していきたいと思います。

今、うちの相談室では夏の合宿(発達障害のある子どもとのキャンプ)の準備が進んでいます。このキャンプにはたくさんの人手が必要なのですが、ほとんどがボランティアです。長年うちの相談室に関わってくれているボランティアさんもいますが(スタッフ顔負け)、最近の合宿の傾向として初めてのボランティアさんが増えています。

しかしそれはたまたまではありません。意図をもってそうなってきているのです。

というのも、発達障害についての理解者を一人でも増やしていきたい、という思いがあるからです。

なので、ボランティア募集は「初心者大歓迎」なのです。

しかし初心者だからといって手抜き(?)はしません。かならず相談室を見学してもらい実際のかかわり方や様子を見てもらう、そして事前のミーティングでしっかりと担当する子どもの個性と特性を理解してもらう、この2点を重視しています。こうして多くのボランティアさんが子ども達とかかわり、地域に理解者がどんどん増えていくことを願っています。

それにしても毎回思うのですが、とてもしっかりした動機付けの高いボランティアさんがいつもちゃんと集まってくるのです。不思議といえば不思議なことです。金銭的なインセンティブのない仕事なので、みんな率先して集まってくる。すばらしいことです。

ボランティアさんだけではありません。先日そのボランティアでの事前ミーティングの時に、子ども達の歯の管理について、加賀谷歯科医院の加賀谷先生がわざわざ説明に来てくださったのです。

加賀谷先生はその前にも、スタッフ向けに障害のある子ども達にとって歯の管理がいかに大事か、レクチャーしていただきました。加賀谷先生とは、以前先生が歯磨き講習会でうちの施設にいらしたときにお会いしたのですが、初めておはなししたときにすぐ、「この先生とはウマが合う」と直感したのでした。いらい、何かの折に、ぜひ一度先生をうちの相談室にもお呼びしたいと思っていました。

こうして実現した加賀谷先生直伝の歯の管理についての講習会。歯磨きの実習までしていただき、本当によい勉強になりました。

また、驚いたのが、僕の感覚と先生の感覚がとても近いということです。先生がおっしゃっていて特に印象に残ったのが、「歯磨きが苦手だからといって、さけてばかりでは後で大変なことになってしまう。そこをいかに抵抗なくやってもらうかがプロ」ということです。これは療育の考え方に通じるところがあります。嫌なことを無理矢理でなく、かといって引いてばかりでもなく、やはり基本は相手をいかに理解してその人にあったやり方であせらず、だけどあきらめず関わり続けるということが大事なのだと言うことですね。その意味で僕と全く同じ姿勢の先生に出会えてとてもうれしかったです。

そして、加賀谷先生だけでなく、すてきな出会いがありました。

以前、このブログでもご紹介した、翻訳家の新宅美樹さんが相談室の見学にいらっしゃいました。お仕事の関係で東京にいらしているときにわざわざ来ていただいたのですが、本当にありがたいことです。

新宅さんは「自閉症の兄とともに」という本を翻訳されたのですが、お知り合いに自閉症のお子さんがいたりと、とても穏やかな雰囲気の方なのですが、真剣にこの子たちのことを考えているパッションが伝わってきます。さらに、とても聞き上手な方だったのでかなり盛り上がってしまいました。時間ぎりぎりまで見学していただき、子ども達へのおやつまでいただきました(偏食の強い子がペロっと食べたときには本当におどろきました)。

こうしていろいろな方と出会っていく中で、やっぱり類は友を呼ぶというか、めぐまれているなと思います。このような出会いに感謝しつつ、これからも頑張っていこうと思います。

2008年6月26日木曜日

「音符と昆布」の井上春生監督と出会う

「音符と昆布」という映画をご存じですか?

「音符と昆布」は「生きにくさ」をかかえる姉妹の物語で、姉役の池脇千鶴さんはアスペルガー症候群のある女性として登場します。つまり、「レインマン」「モーツアルトとクジラ」「マラソン」と並んで、日本人のクリエーターによる初の自閉症スペクトラムについての映画なのです。

アスペルガー症候群の女性が出てくる映画、ということで僕もすぐに観たかったのですが、1歳の双子がいると映画館は無理・・・。結局、映画館で観ることができなくて、いつか絶対に観るぞと心に決めていたのです。

しかし、人生は偶然で成り立っているというか、本当に不思議な出会いがあるのです。親御さんに「音符と昆布」の監督をされた井上春生さんと繋がりのある方がいらっしゃって、これはひょっとすると一緒に上映会ができるかもと思い、お声をかけさせてもらったところ、先日監督さんとお会いすることができたのです!!

実は井上監督には自閉症の息子さんがいらっしゃいます。息子さんとのエピソードをいろいろ伺っていくなかで、「トンネルの先にある小さな灯りになりたい」という言葉がとても印象的でした。

映像に携わるものとしてこの子達のために何ができるだろう?と考えたとき、単にインフラ(病院や施設など)を作るのではなく、暗いトンネルの先にある希望のようなもの、あるいは半歩でも前向きになれるようなものを作ることができないか・・・

それが小さな灯りである「音符と昆布」だったのです。

僕としても、うちの相談室が目指すところ、なぜ監督に声をかけさせてもらったのかをつたないながらも精一杯説明させていただきました。もっともっと多くの方に、自閉症スペクトラムについて、本人と家族の生きにくさについて、知ってもらいたいと。そのために、ぜひ監督と一緒に「音符と昆布」のトークショー&上映会を行いたいとお話ししたところ、井上監督は快く引き受けていただけたのです!!

まだ具体的な日程は未定ですが、これから青写真を作っていきたいと思います。今からすごくわくわくしています。ぜひ「音符と昆布」の上映会を開いて、多くの方々に自閉症スペクトラムについて知ってもらいたいと思います。詳細はまたブログでお知らせしますね。楽しみにしていてください。


2008年6月23日月曜日

障害のある子ども達の放課後活動が危機に直面しています(怒りのあまり長文!)

日曜日は放課後連・東京の学習会に行ってきました。自立支援法や児童福祉法が改正される今年は障害のある子どもの放課後活動にとっても変革の年ということで、日曜日でしかも雨でしたが140人以上の方々が参加され、関心の高さが伺えました。

今年の学習会は放課後活動の実践報告だけでなく、足立区福祉事務所の二見清一氏をお呼びして「障害者自立支援法と放課後活動」という分科会も開かれました。個人的にはこの話をメインに来たのですが、結論としてはあまり将来に期待できない話となりました。

現在の障害のある子ども達の放課後活動について簡単にまとめてみると、かつては厚労省のモデル事業として「障害児タイムケア事業」や支援費制度の「児童デイサービス」が障害のある子どもの放課後の受け皿になっていました。そこではしっかりと「国の責任のもとに」子ども達の放課後の居場所が保証されていたのです。

しかし、2006年度に障害者自立支援法が始まり状況は一転します。自立支援法での「児童デイサービス」は幼児の「療育」がメインとなり、小学生が3割以上いる事業所の補助金が大幅にカットされました。さらに問題なのが、この放課後タイプの児童デイサービスが「経過措置」とされ近々廃止されることも決定してしまっているのです。厚労省の考え方では、幼児期は児童デイサービスで療育を受け、その後小学生以降はタイムケアを引き継いだとされる(しかし実際は別物の)「日中一時支援事業」でやりなさい、ということだったのです。

とすると「日中一時」がとても重要になるのですがこの事業がまたおそまつで(だんだんと表現が悪くなってきた・・・)、歳出削減を目指す厚労省はあろうことか国の責任でおこなう事業を「児童デイサービス」だけ残し(しかも対象は幼児だけ)、日中一時支援事業は市区町村管轄にして責任放棄しただけでなく、市区町村の選択事業にしてしまったのです。

それでどういうことになったかというと、財源の少ない市区町村が出せる補助金には限界があるわけで、事業所に十分な運営費がいかなくなりました。また選択事業のため日中一時をそもそも実施しない自治体も少なくなく(実際に日中一時支援事業を実施している市区町村は7割くらいだそうです)、障害のある子ども達の放課後保証は「市区町村のやる気次第」になってしまったのです。障害のあるお子さんをもつ親御さん達は、こんな状態で安心して放課後に子どもを預けることができるでしょうか?

それでも現場では、職員がワーキングプアになりながらも必死になって子ども達とかかわっています。実践報告を聞いていると、涙がでそうです。そこには、恵まれない環境のなかでも子ども達のことを第一に考え、正面から受け止めようともがき続ける放課後活動の現場があります。

親御さんの負担も相当なものです。私たちの相談室にも2時間かけて相談室までやってきて2時間すごし、また2時間かけて帰って行く方がいらっしゃいますが、それだけ地元に安心して預けられる場がないのです。

こんな現状を知って知らずか、厚労省の「障害児支援の見直しに関する検討会」でも「学齢期・青年期の支援策」というかたちでざっくり検討されています。聴いた人の話によると、はっきり言って「いい放し」ということでした。それでも7月中には報告書が出て、それを元に秋の国会に向けて自立支援法の改正案が作られるわけです。障害のある子ども達の放課後活動が、ボク達の知らないところでどんどん訳の分からない方向にねじ曲げられつつあるのです。こんな状態でいいのでしょうか?

今日の学習会で全国放課後連と放課後連・東京の署名用紙をいただいてきました。おそらく今後ホームページにアップされるでしょう(アップされればこちらでもお知らせします)。まずはできるところから活動していかないといけません。しかしあまり時間はない・・・。
みなさん!どんなきっかけでもいいから障害児の放課後活動に関心をもっていただき、ボク達の活動をご支援ください!!よろしくお願いします。

今、本当にピンチなんです!

2008年6月19日木曜日

Firefox3とマイノリティーの哲学

はっきり言います。

ボクはマイノリティーが大好きです!
(だからどうした、なんて言わないでね)

パソコンはMacだし、通勤手段はロードレーサーだし、ケイタイはソフトバンクだし、人生の歩み方だってかなりマイナーというか、裏道を通ってきたし。神様もボクの傾向を知ってか知らずか、授かった子どもは双子だし。ちょいと他とは違います。ほっておくと、どんどん他の人からズレてくるのです(こんなボクのそばにいる人は大変だと思いますが・・・)

そんな左巻きなムカイが愛するブラウザは、もちろんFirefox!まあFirefoxも人気がでてきて、必ずしもマイナーといえないかもしれませんが、それでもIEよりはぜんぜんシェアが少ないです。

それでもなぜ使うか?といえば、やはり使いやすいから

特に今のボクの情報管理はGoogleを中心にしているので、Googleのサービスを高速でフルに使おうとすれば、おのずとFirefoxがもっとも合理的な選択肢となるわけです。

ちなみに、大多数でいることは簡単です。なぜなら何もする必要がないからですね。マイノリティーをわざわざ選択するためには、そこに「哲学」が必要となります。

発達障害も社会的にみればマイノリティーになりますが、ボクが発達障害の世界に関わろうとしたのも、そこに「哲学」があったからだと思います。

発達障害の「哲学」とは、ボクの考えは「違いを認める」ということになるのかなと思います(注:違いを受け入れるのとは違います)。

違っててもいい、違いを隠す必要はないし、大多数であることを強要される必要はない。違いを「受け入れる」ことは大変だし必ずしも受容が必要ではないけど、少なくとも違いを「認める(知る)」ことで開ける世界がある・・・そんな哲学が発達障害にはあるように感じます。

Firefoxから随分と想像力が跳びすぎましたが、「違っててもいい!」と思える人には超お勧めですよ。ぜひダウンロードしてください。

Mozilla Firefox ブラウザ無料ダウンロード

2008年6月14日土曜日

障害のある子どもの放課後活動

うちの相談室も加盟している、障害児放課後グループ連絡会・東京(放課後連・東京)で来週大きな学習会を行います。

学童保育など子どもたちの放課後活動は悲惨な状態にあるのですが、障害のある子ども達を対象とした僕たちにような活動も状況としてはかなり厳しいものがあります。

少しでも理解者を増やし、障害のある子どもの放課後活動にどのような意味があるのかアピールするための学習会です。ぜひご参加ください。

「第13回学習会 障害のある子どもが育つ放課後実践」
日時:2008年6月22日(日)午後1時~4時30分
場所:北区赤羽会館4階大ホール
参加費:1200円

「「障害児放課後グループ連絡会・東京(放課後連・東京)は、障害のある子どもの放課後活動を行なう東京のグループの連絡会です(現在50グループが加盟)。

障害者福祉は今、障害者自立支援法が実施されて以来、非常に厳しい状況にあります。障害のある子どもの放課後活動についても都は、「新しいグループには補助金を出さない」と言っています。これまで補助金を出していたグループには「当面は補助金を出す」と言うものの、その「当面」がいつまで続くのかも分かりません。

こうした中で今回の学習集会は、障害のある子どもたちの育ちにとって放課後活動がどんなに大事かを関係者・放課後活動職員・保護者・学校教員を交えて考え合いたいと思います。そして、このような放課後活動がこれからも存続・発展していくように、さらに運動を高める機会にしたいと考えています。
お誘い合わせの上、ぜひご参加ください。 」

2008年6月12日木曜日

就労支援の研修会に参加してきました

昨日は文京区障害者就労支援センター主催の研修会に行ってきました。子どものお風呂という個人的な理由で全部は聴けなかったのですが(先生方ごめんなさい・・・)、センター長の配慮(?)で発達障害に関する前半の講義はばっちり聴くことができました。

発達障害については東京都発達障害者支援センター(TOSCA)から神保育子先生が講演してくださいました。TOSCAでは面接による支援、情報提 供、コンサルテーション、普及啓発などを主な事業としていますが、事業概要をお聴きすると16歳以上の相談ケースが7割以上ということです。療育をやっ ていると子どものことばかり目がいきますが、考えるまでもなく人生は大人になってからの方が長いわけで、成人期以降の相談ニードがとても高いことが分かります。

また、相談ケースの8割以上が知的障害の無い方、つまり療育手帳をもっていない方ということもお聴きし、まさかそれ程とは・・・・と正直びっくりしまし た。療育手帳をもっている方は福祉でカバーできるケースも多いのでしょうが、やはり高機能の方やアスペルガーの方への具体的なサポートが少なす ぎることも原因なのだと思います。

お話を伺っていて印象に残ったのが、全てにおいて「具体的に」ということです。

相談業務だからといって面接だけで関わっていては、相手のことが分からない。実際に就労場面や社会的な場面、あるいはグループワークなど具体的な体験がとても大事ということでした。最近うちの相談室でも高機能グループで試みているのが、ちゃんと「失礼します」と言って受け付けの部屋に入り約束のものを取ってくるなど、ゲーム的な要素も取り入れつつ楽しみながら社会体験をしていますが、その方向性が間違っていなかったということが分かりました。

そして先生が強調していたのが、そういう具体的な場面で時間がかかるかもしれないけど「人を通して解決した体験」をしっかり積み上げること、つまり人と関わる喜びの種を人生の早い内に蒔くことが大事なのだとおっしゃっていました。形だけのスキルを身につけてもダメだということですね。

短い時間ではありましたが、やはり将来から逆算して関わることがとても大事だと実感する研修でした。先生方、センター長、ありがとうございました。

2008年6月11日水曜日

夏のセミナーで講演します

上智大学カウンセリング研究所(現:上智大学公開学習センター)主催のカウンセリングセミナー「発達障害への取り組みについて考える」で講演することになりました。

日時:8月7日(木) 9:30〜12:30

発達障害支援コース
「ノースカロライナTEACCHプログラムから考える発達障害児者への支援」
講師:向井 崇(東京カリタスの家 子ども相談室)

このセミナーは3日間あるのですが、そのうちの1コマをムカイがお話しすることになりました。それぞれ分科会に分かれますので、多くの先生方が講演されます。そのうちのお一人は昨年までTEACCHセンターに留学されていた梅永雄二先生もいらっしゃいます。梅永先生はTEACCH視察研修の時にお会いでき、またお目にかかれるのでとても楽しみです。ほかにも宮本信也先生(ボクも好きな「十人十色なカエルの子」の著者でもいらっしゃいます)などそうそうたるメンバーで、今からかなり緊張しています・・・。

この講演のお話しをいただいたときに、ボクとしては正直に「TEACCHについてお話しする立場にないし、する力量もない」とお伝えして、それでも昨年のTEACCH視察研修はボクなりに学び感じることがたくさんあったので、それについてはお話しできます、ということでこのような形となりました。視察研修については他にもお話しする機会がありましたが、時間の関係でかなりはしょっている(それでも随分時間オーバーしましたが・・・)ので、ちょっとおおげさですがこれを機会に視察研修の体験を集大成としてまとめてみようと思います。

ボクとしては、下記の「紹介文」にもあるように、正直にボクが体験したことを参加者のみなさんと分かち合って、今後の発達障害支援を考える機会となればと思います。よろしければ、ぜひご参加ください。

「2007年8月にアメリカのノースカロライナ州で実施されているTEACCHプログラムを視察してきましたが、そのなかでとても印象だったのが、同行さ れた佐々木正美先生が「視察を終えて偉くなったのではありません。私たちは幸福な体験をしてきたのです」と視察最終日におっしゃったことです。実際、発達 障害のあるお子さんや大人たち、またそのご家族が障害の程度の関わらず活き活きと自分らしく生活されている様子を目の当たりにして深く感動したと同時に、 日本でもこのような支援が実現できないものかとうらやましく思いました。

確かに日本でも、発達障害者支援法、障害者自立支援法、特別支援教育など発達障害をもつ方々を取り巻く環境はずいぶんと変化してきました。日本でも「生 涯にわたる支援」が目指されているなかで、以前と比べるとずいぶんと支援の幅が広がり、理解も深まっている印象を持ちますが、まだまだノースカロライナで の実践と隔たりのあることが現実ではないかと思います。

TEACCH視察から学んだことをどのように日本の発達障害児・者の支援に活かしていくか、視察時の写真やムービーをご紹介しながらみなさんと一緒に考えていきたいと思います。」

2008年6月10日火曜日

待ってたよ!iPhone 3G


自他共に認めるApple教信者として、このニュースは外せませんでした(発達障害には全く関係がないけど)。

iPhone 3G発表です!!



去年ノースカロライナに行ったときに、現地でけっこうたくさんの方がiPhone使っていて、かなり悔しかったのを思い出します(最終日、ショッピングモールのApple Storeでいじりまくりました)。

それがついに日本でも発売です。

ただ、問題は今使っている端末のこと。

今はWindowsMobileの携帯端末を使っているのですが、ほんとダメダメ。はっきりいってめちゃくちゃ使いにくいのです(やっぱりMicrosoftはダメね)。

だけど残念なことに「やわらか銀行」の月賦がまだ残っているので、買い換えると随分損するということです。このタイミングは痛い・・・。

そんなわけで、真剣に悩む日が続きそうです。

お勧め!発達障害のある人の就労支援ガイド

いつも参考にしているたまねぎ☆あたまさんのブログから、沖縄県が作成した就労支援ガイドが紹介されていました。

保護者と支援者を対象としているガイドブックですが、すばらしいのが将来を見据えた支援の必要性をしっかりと訴えていることです。

「子どもがまだ小さいから就労のことは早いのでは・・・?」

親御さんはそれぞれいろいろな考え方があるので、ボクは全ての保護者が子どもの就労に向けて取り組むべきとは思いませんが、支援者は違います。

特に発達障害のある方は、間違った学習や勝手な理解(ニキ・リンコさんの言う俺ルール)が後々の就労場面で問題になることがあります。それを予防するには将来を見通した支援が必要で、そのためにも支援者が将来から逆算した支援をしなければいけないのです。「子どものウチは自由にのびのびと・・・」なんてナイーブなことを言っているような支援者は、自閉症のお子さんに関わってはいけないとボクは思います。

このガイドブックはアンケートや実際の就労事例から社会生活に必要なことをチェックリスト化し、具体的に課題分析している(スモールステップ化)ので、就労に向けて今何が必要か、すごくわかりやすいです。基本的だけど社会生活に必要なマナーや生活習慣の重要性が痛感できます。

本当に良い資料でした。沖縄県すごいぞ!!

2008年6月6日金曜日

「最強ワーキングマザー対談」がおもしろい

ボクはテレビをぜんぜん見ないし、週刊誌や雑誌も全く買わない人間ですが、数少ない好きな漫画に西原理恵子さんの「毎日かあさん」シリーズがあります。

西原さんのマンガは、学生の頃に友達に勧められてそれから一貫して好んで読んでいるのですが、毒舌だけど憎めない台詞や、上手いのかそうでないのか分からない絵ですが、これまた嫌みが無くていいというか、プライベートをあっけらかんとオープンにする明るさとか、とにかく好きな人にはたまらない魅力があるわけです。そんな西原さんが子育てや毎日のこまごまとしたことをマンガにしたのが、「毎日かあさん」なのです。

その西原さんと、これまた最近大好きな勝間和代さんが最強のワーキングマザーとして毎日新聞で対談されています。お二人とも働くお母さん(しかもかなりばりばり働くお母さん)として、ご自身の経験や行政のことを鋭く語り合っています。

これはボク自身もそうだし、みなさんもそう感じているかもしれませんが、西原さんと勝間さんが言っているように今の日本は子どもに対して、そして子どもを育てる人に対して本当に「冷たい」ということです。

国際的にも少ない教育予算と子育て支援費、待機児童の多い保育園と崩壊中の学童保育、会社や世間の冷たさ、などなどおもしろおかしく対談していますが、内容はかなりシビアです。勝間さんからシリアスな統計データが出されると、将来の不安に正直つぶされそうになります。一見読みやすそうなのですが、子育て世代の切実な叫びを代弁しています。

政治家や大学の先生よりもよっぽど説得力のある対談です。おすすめですよ!

2008年6月4日水曜日

最近の悩み・・・

イヤなことはすぐに忘れる!がモットーの向井ですが、それなりに悩みもあります。

最近一番の悩み。

それは「スタッフ間の情報の共有化」です。

子ども達によりよい関わりがしたい。その子その子に合ったサポートを実現したい。個別のニードに基づいた課題を作りたい・・・。

そのためには、その子の個性や障害特性だけでなく、普段の様子やこちらの関わりに対する反応や課題の内容をしっかりと把握し、モニターし続け、それを共有化する必要があると思うのです。

しかし現実的に少ないスタッフでたくさんのお子さんの状態を把握しようとした場合、なかなか理想通りにはいかない。結局、関わっている人の個人の力量にまかされてしまう・・・そんな危機感があるのです。

このような支援者が個人で抱え込むような状態への回答には、やはりチームアプローチが必要なのだと思います。しかしそのための「情報の共有化」が本当に難しいのです。

時間がない・・・ことが一番の理由なのですが、なんとか解決できるようにいろいろお試し中です。なにか良いアイデアがあれば教えてください。

2008年6月1日日曜日

今日の遠足も無事終了

昨日までの雨がウソのように東京は快晴となりました。
(毎年思うのですが、ウチのスタッフには晴れ女、晴れ男が多いですね)

そんな気持ちの良い天気のもと、子ども達とボランティアさんと一緒に昭和記念公園に行ってきました。

参加した子ども達の落ち着きっぷりに今回も感激でした。初参加の時は見通しがつかずパニックを頻発していた子も、今回は一度も乱れることなく落ち着いて一緒に活動することができました。当たり前のことなんだけど、分かれば落ち着くのです。その子を変えようとする前に、こちらが変わらないといけないことを改めて実感しました。

子ども達がそれぞれのびのびと遊んでいる姿を見ていると、やっぱりやってよかったなと思います。だけどこうして発達障害のある子たちと遠足に行けるのも、ボランティアさんたちのご協力のおかげです。今回も、みなさん本当にありがとうございました!

2008年5月26日月曜日

TEACCH5デイトレーニングセミナーに参加してきます

今の職場に就いて6年目。とにかくがむしゃらに発達障害児にとって良いと思ったことは何でも実践してきました。

そのなかで特に有効だったのがTEACCHでありABAでした(これからはそこにPECSが入ります)。それらのメソッドを導入することで、今では就職当時から比べると倍の利用者数なのに、あきらかに問題行動が減っています。はっきりと子ども達が落ち着いてきているのです。専門的なアプローチが功を奏していると言えると思います。

一方で僕として限界を感じるのが、系統的なトレーニングを受けていないので、何か一つ寄って立つような柱となる専門的技術が足りないということです。今では、例えばTEACCHに関する書籍も増え、構造化に役立つ情報もたくさんあり勉強しようと思うといくらでもできる環境にありますが、ではそれでTEACCHアプローチを「使える」レベルに達するかと言えばそんなことはないのです。昨年ノースカロライナに行って痛感したのが、現場の人たちの専門性がとても高いことです。みなさんしっかりとしたトレーニングを受けており、そこがぜんぜん違うのです。

そんななか、今年もNPO法人それいゆでTEACCH5デイトレーニングセミナーが開催される情報が入りました。佐賀だから遠いし、お金もかかるし、なにより家族に負担がかかるし・・・ということで二の足を踏んでいましたが、でもやはりしっかりとしたトレーニングが必要!と参加することにしました。

なにより今年のTEACCH5デイには、昨年のノースカロライナTEACCH視察でお世話になったシャーロットTEACCHセンターのディレクターであるジョイス・ラム先生がいらっしゃるということです。当時、現地に留学していた梅永先生曰く、メジボフ博士一押しの先生ということでした。またシャーロットに留学されていた方がラム先生の観察眼の鋭さを「めっちゃ、すごい!」とおっしゃっているのがとても印象的でした。そのラム先生がいらっしゃるのだから、ここで参加しないと一生後悔すると思い、家族には本当に申し訳ないけど参加申し込みをすることにしたのです。

過日、それいゆから了承のメールが届き(いちおう参加には審査があったけど、無事通りました)ました。これで一からTEACCHについてしっかり学べます。なにより楽しみなのが、全国から現場の人たちが集まり、交流できるということです。ぜひこの経験をまた現場に活かしていきたいと思います。

2008年5月21日水曜日

「自閉症の兄とともに」

自閉症など発達障害のある子ども達の支援を考えたとき、家族へのサポートが不可欠であることは当然ですが、きょうだいへの支援も本当に重要だと思います。しかし、その重要性が分かっていながらなかなか本人達へ関わることで手一杯になり、きょうだい支援には全く手がつけられないのが現状でした(ようやく今年はきょうだいへのささやかな関わりが実現しそうですが)。

そうしたなか、ネットでたまたま繋がりができた方が「自閉症の兄とともに」という本を翻訳されたそうで、とても興味深かったのでここでご紹介します。

「自閉症の兄とともに」は自閉症の兄をもつ弟(漫画家)と妹(編集者)が書いたアメリカの本で、そのご家族の50年が描かれているそうです。

そこにはアメリカの自閉症支援の歴史も詰まっているそうで、日本よりはるかに進んでいると思われるアメリカでの支援の現場(施設での虐待もあるそうです)もよくわかるのではないかと思います。

訳者、新宅美樹さんの思いをご紹介すると

自閉症の兄デイビットを中心とする家族の歴史を、編集者の妹と漫画家の弟が
 1章ごとに文章とマンガで「カラシック家」をつづったもの。
 本の構成という点からも、なかなかユニークですが、これにはしっかり意味があります。
 そのあたりは著者の日本語訳へのメッセージに書かれています。

 思い返せば2年前、友人の子どもが高機能自閉症と診断されました。
 何か友人の役に立ちたいと思い始めた頃、アメリカのテレビ番組をを通じてこの本のことを知り、
 すぐに原書を取り寄せ、読み始めました。

 その後、この本が日本語に翻訳されていないことを知ります。
 きょうだい支援などのホームページでも紹介されているのに、翻訳されていないなんて・・・
 ぜひ日本語に訳して、日本の同じような境遇の人たちに、
 そしてご両親や医療・療育・福祉の関係者の方々に読んでもらいたいと思い
 出版してくれる会社を探すところから始めました・・・」

ということで、その「自閉症の兄とともに」が6月1日に出版されます。当事者の書かれた本は増えてきましたが、きょうだいが書かれたというのはまだ少ないかなと思います。興味のある方はぜひお読みくださいね。

2008年5月20日火曜日

障害のある方への職業紹介(ハローワーク)が過去最高になったそうです

厚労省の発表によると、ハローワークにおける障害のある方の就職件数が過去最高になったそうです。

個人的に注目したいのが、発達障害者、高次脳機能障害者、難病者等その他の障害者(対前年度比489人(54.6%)増)の新規求職申込件数が増えていることです。
(※この調査はおそらく障害者自立支援法に基づいているので、障害区分がいわゆる3障害「身体障害」「知的障害」「精神障害」になっており、「発達障害」は「その他の障害」になっていることに注意!!さらにややっこしいことに、ここでいうところの「発達障害」は、「知的障害」と区別されていることからおそらく知的障害をともなわないいわゆる高機能自閉症やアスペルガー症候群にあたると思われます)

なかでも「その他の障害」の発達障害は、平成10年では新規求職申込件数が300弱だったのが平成19年には1400件と3倍以上になっており、発達障害のある方がハローワークに結びつくケースが急激に増えていることが分かります。

また、平成17年を境にそれまで400件前後で推移してきた新規求職申込件数が急に倍近くなっていることを考えると、平成17年施行の発達障害者支援法の影響があったことは明らかで、やはりとてもインパクトの大きい法律だったのだなと思いました。

一方気になるデータとして、実際に就職したケースを率にすると平成19年で約26%と、ほぼ4人に1人の割合しか就職まで結びつかなかったということになります。ちなみにこの率は他の3障害と比べて最低の数字になっており、あらためて発達障害のある方の就職が如何に難しいかが分かります。こういうデータを読むと、取り組むべき課題はまだまだ多いなと実感します。

他には、ページの最後の方に、ジョブコーチのシステムや最近注目の「トライアル雇用」についての説明がありますので、それだけでも大変有益な情報ですよ。ぜひアクセスしてみてください。

2008年5月18日日曜日

遠足無事終了

今日は本当に暑かった!だけど子ども逹は元気に鎌倉の源氏山を歩きました。ボランティアさんもしっかりついてくれて、本当に安心して遠足を楽しむことができました。

こうやって子ども逹が楽しめるのもボランティアさんのご協力のおかげです。今回は社会人のボランティアさんが多かったのですが、皆さん筋肉痛にならないといいですね。ご協力いただいた皆さんに感謝です。

今日は遠足

なのです。

以前の春の遠足は1回でやっていたのですが、参加者がボランティアさん含めて80人を越えてくると、さすがに安全確保の面からも運営が難しくなってきたので2回に分けるようにしたのです。これでずいぶんと余裕ができました。(それでも50人くらいいるけど)

今回は子どもたちを引き連れて鎌倉に行ってきます。みんなで乗る湘南新宿ラインは鉄ちゃんたちに魅力的!

とにかく怪我と迷子がないように、気をつけて行ってきます!!

2008年5月17日土曜日

おすすめ!ネットワークの作り方レシピ

今日は、上智大学総合人間科学部社会福祉学科の島津望先生が、うちの相談室を見学に来ていただきました。

ちなみに、先生の著作です。



島津先生は、医療現場でのネットワークやマネジメントがご専門です。以前上智大学でのスーパービジョン勉強会に行ったとき先生のお話をお聴きして、「今、うちの施設で必要なことはマネジメントだ!」とピピっときたのです。それで思い切ってその場で名刺交換をしたのが先生とつながるきっかけでした。


ざっと施設の概要、組織、子ども相談室での活動内容などご説明しました。子ども相談室での発達障害児への個別支援や視覚支援はかなり力いれて説明したのが功を奏したのか(?)、先生にもずいぶんと興味をもっていただけました。

組織論についても、さすがは日本各地の医療現場など視察されている先生なので、うちの施設の問題点や課題と対処法を的確にアドバイスしていただき、とても興味深い時間となりました。もうほとんどコンサルテーションしてもらった感じです。

その先生との話し合いのなかでも、ネットワークに関するご指摘はとても興味深かったです。

僕自身、地域の福祉センターや学校、行政などとどうやって有効なネットワークを構築していくか、悩んでいました。確かに特別支援教育も始まり「連携」が声高に叫ばれるご時世ではありますが、実際にはなかなか有効にネットワークが機能していない、特に僕たちのような民間の支援機関と公的機関との連携がまだまだなように感じていたからです。

そこで島津先生が指摘なさったのが「ゆるやかな繋がりの大切さ」です。

先生はミルグラムの「6次の隔たり」「弱い絆の強さ(strength of weak ties)」を挙げられ、意識を同じくする人同士がインフォーマルにつながることの方が意外にも強いネットワークを作るということを指摘されました。

例えば広島の尾道には「尾道式」と呼ばれる地域医療連携体制があり、地域の医師会が中心となって病因や福祉を巻き込んだネットワークを作り上げていったそうだが、その背景には医師会で昔から続いていた「俳句の会」での個人的な繋がりから広がってきたのだそうです。厚労省も注目する「尾道式」ネットワークが実は俳句の会をきっかけにしていたというのが、意外だけど納得という感じです。

ということで、先生がお勧めするネットワークの作り方は、「とにかく意識の高い人同士がまず集まってみよう」ということで、具体的には勉強会がとてもお勧めとおっしゃっていました。勉強会をすることで地域にどんなスキルをもった人がいるか分かりますし、個人的な繋がりに結びつきやすいということです。成功したネットワークのきっかけが勉強会だったというケースは多いそうなので、かなり有効な感じですね。実際、全国で発達障害の勉強会が始まっていますが、ネットワーク作りという視点からみると、とても理にかなっているというわけなのです。

要はネットワークや連携は待っているのではなく、必要なら自分で作ることのほうが近道ということですね。勉強になりました。ぜひ地域での勉強会を企画してみたいと思います。

2008年5月12日月曜日

勝間和代さんの情熱大陸

お金の専門家であり、3女の母であり、ロードレーサー乗りであり、世界で注目される女性50人のうちの一人であり・・・

そんな勝間和代さんが情熱大陸に出演されました。

僕は双子が生まれてから、どうやったら仕事と家庭を両立できるか?と考えてきました。そして勝間さんの本に出会い、僕の生活スタイルを随分と変革することができました。いわば僕にとって勝間さんは、究極のライフワークバランスを実践するメンター(お師匠)と言えるでしょう。

そんな勝間さんの言葉で一番印象に残ったのが

「子ども達が日本にいてうれしい日本にしたい」

でした。

日本はどんどん競争力が落ちてくる、環境も悪くなる、こんな世の中にこの子達を生んで良かったのか・・・と奥さんと話し合ったこともありますが、そうであればやはり私たちが子ども達に残しておきたい世の中にしていくことが大事なのでしょう。まだまだ頑張っていきたいと思います。

2008年5月11日日曜日

梅永雄二先生の「自閉症の人の自立をめざして」

今週読んだ本です。



昨年、ノースカロライナのTEACCH視察に行ったとき、現地で留学されていた梅永雄二先生の最新作です。写真や具体的なケースがたくさん詰まった、最新のTEACCH情報になっています。これを読むと、TEACCHが単なる自閉症の療育メソッドだけにとどまらないのが良く分かります。個人的にはノースカロライナの風景がたくさん載っていて、なんだかなつかしくなりました。ぜひご一読を!

2008年5月10日土曜日

佐賀県で全国初の発達障害児対象のフリースクールが実現

すごいです。佐賀県!

発達障害のある小中学生を対象としたフリースクール「フリースクールSAGA」を、佐賀県が全国自治体としては初めて設置したというニュースが入りました。

運営を委託されたのは、ご存じNPO法人それいゆです。さすが服巻先生です。あったらいいな、という支援体制をしっかり作り上げます。本当にすごいことですね。

さらに驚くのは、自治体と協力して実施されていることです。このあたり行政とのコラボレーションを積極的に進めるTEACCHと同じ哲学に基づいていると思います。一つ一つ実績を積み上げることで、行政の理解と協力を得てきたのですね。「行政は敵だ!」なんて言っている古いタイプの民間福祉施設とは、このあたりが全然違いますね。

ちなみに「フリースクールSAGA」は定員が9名だそうで、授業時間を15〜20分単位で短くすることで集中できるように工夫したり、個別指導計画に基づいて訓練を行うなど発達障害の特性に合った対応が当然のごとく行われているそうです。期間は6ヶ月となっていますが、その期間の利用料は無料だそうです。まさにTEACCHの理念が佐賀で花咲いています。詳しくはネット版産経ニュース佐賀県のホームページをご覧ください。

2008年5月8日木曜日

歩けるのなら、歩いてください

ゴールデンウイークも終わり、日常が戻ってきた感じですね。今年の連休は短かったこともあり、我が家では実家の広島に帰っただけでした。

子どもがいないときには広島に飛行機で帰るなんてどうということもなかったのですが、双子が生まれてからはちょっと地下鉄に乗って移動するだけでも一大事になりました。我が家の双子バギーは戦車のようにとてつもなくデカイので、移動するのが本当に大変なのです(あまりのでかさにたいていの人たちが振り返ります。その分、周りの人が圧倒されてよけてくれるので「そこのけ、そこのけ」で進みやすいとも言えますが・・・)

要するに、双子とバギーで移動する時、僕たちは社会のバリアに直面することになります。一時的に「障害者(正確には障碍者)」となるのです。こうして双子の親になって初めて、世の中にはずいぶんとバリアが多いなと実感することになったのです。

なかでも大変なのが階段の移動。もちろんバギーを持ち上げて階段の上り下りはできません。小さなバギーならなんでもない2段でさえ超えられないのです。だからエレベーターがとても大事になります。

確かに世の中のバリアフリー化はめざましく、公共交通のエレベーター設置度はとても上がってきました。その分、移動も昔と比べてずいぶんと楽になったと思います。

しかし、そのようにせっかくつけたエレベーターも、しっかり歩ける健常の人たちが満員でのっていて何らかの障碍を抱えている人が入れなくては、まったく使い物にならないのです。ゴールデンウイーク中は移動する人が多いので、なんどもエレベーターを待たなければいけませんでした。これでは何のためのエレベーターか分かったものではありません。「エレベーターが必要」と「エレベーターは便利」とはずいぶんと違うのです。「ハードウエア」としてバリアフリーになっても、それらを利用する「ソフトウエア」としての人の問題があると感じました。

発達障害の世界でも、特別支援教育や発達障害者支援法など制度的な整備は進んできている印象がありますが、実際にかれらや家族が生きやすくなったとはまだ言えないように思います。その背景には、制度や施設などの「ハードウエア」だけでなく、それらを利用する「ソフトウエア」の問題も同様に大きいですね。

2008年5月1日木曜日

Google的療育とアップル的療育!?

最近読んだ本で個人的にとてもおもしろかったのが、「アップルとグーグル 日本に迫るネット革命の覇者」です。



僕のことでいうと、世の中にまだWindowsというものがなくてMS-DOSでパソコンが動いていた頃からのMacユーザーでして、自分でいうのも何ですが、MacファンというよりもMacカルトと言っていいくらいAppleに忠実なユーザーです。

一方のGoogleはというと、日本ではまだまだYahooに後塵を拝していますが、その検索精度だけでなく、Gmail、iGoogle、カレンダーやオフィスソフトまで、僕にとってはGoogleのないネットはありえない状況になっています。

これらシリコンバレーを代表する企業の両者を比べると、なかなかおもしろいことが見えてきます。

アップルはすばらしいデザインと機能性を併せ持った製品を開発し、それを販売することで利益を上げています。一方のGoogleは、ネットそのものの環境をより整理し誰もが使える技術を無料で配布しています。そしてユーザーからはお金を取らない代わりに、広告収入で利益を上げているのです。

いわば、Googleが水道だとすると蛇口がアップルであり、アップルがスポーツカーであればGoogleが大衆車であり、「思考のための道具」がアップルであるとすれば「思考するウエッブ」そのものを目指しているのがGoogleであると言えるでしょう。

ちょっと強引かもしれないけど、僕のライフワークである発達障害の世界に話を戻すと、「アップル的」か「Google的」かでずいぶんと療育のマネジメントが変わるのではないかと思うのです。

というのも、民間の行動療法やその他の先進的で個人負担の高い療育はその技術力を売りにしているわけで、その意味でアップル的と言えるかもしれません。高くても内容がよければ利用者として満足でいるのです。

ではGoogle的な療育はというと、僕はノースカロライナで実際に機能しているTEACCH(方法論ではなくシステムとしてのTEACCH)はとてもGoogle的であると思うのです。

つまり、ノースカロライナにおけるTEACCHは、発達障害をもつ州民であればだれでもほぼ無料で使えるサービスなのです。そこには「障害程度区分」なんてなく、発達障害のある人たちは生まれたときから家族が望めばTEACCHのサポートが得られ、知的能力に関係なく生活や就労の支援が受けられるのです。そしてそれらのサポートが無料で提供できるよう、政府や州と連携し、企業からも多くの寄付を集めているそうです。これはGoogleのビジネスモデルとそっくりですよね。

もう一つTEACCHの特徴を挙げるとすれば、個人にダイレクトに行うサポートももちろん重視していますが、それよりもむしろTEACCHの哲学やメソッドを広め、社会全体を変革しようとする気概をTEACCHスタッフから感じることです。言い換えるとすれば、TEACCHが目指しているのは「自閉症の理解」であって「自閉症の治療」ではないということです。このあたり、ウエッブそのものを変革しようとしてきたGoogleの理念に通じるものがあると感じます。

最近では自閉症スペクトラムのある方々は全人口の1%を超えると言われる報告が多くあります。ADHDやLDも含めた発達障害はというと、文科省の調査では6%を超えます。技術力は大事ですが、あまりに高価だとどんなに良い技術でも普及していきません。発達障害のある人と家族の福祉を考えれば、無料で幅広く関わることができる、いわばGoogle的な療育が日本にも求められているように思いますが、いかがでしょうか。

2008年4月28日月曜日

僕たちの知らないところで決めるのはやめてください!!

現在厚労省で行われている「障害児支援の見直しに関する検討会」ですが、あまりにもひっそりと進んでいますが、はっきりいってとても重要な会議なのです。

というのも、障害者自立支援法の見直しの一環として行われているのがこの検討会であり、今後の障害児施策に関して今年の7月までにある一定の方向性が出されるのです。とりあえず、関係団体のヒアリングが終わり、月2回ペースで見直しを進めていくそうですが、僕は正直不安なのです。

現場や保護者の意見がちゃんと反映されるのか?
そもそも厚労省は現在の障害者自立支援法をどのように評価しているのか?
学齢児対象の児童デイサービスを経過措置ではなく今後も継続させていくのか?
廃止するのならそれに代わる施策があるのか?

など、聞きたいことがたくさんあります。

もちろん、検討会そのものはちゃんと目的をもっており、「見直しの基本的な視点」として、

・子どもの自立に向けた発達支援
・子どものライフステージに応じた一貫した支援
・家族を含めたトータルな支援
・できるだけ子ども・家族にとって身近な地域における支援

と、ここだけ聞けば、まったくごもっともという感じです。この「基本的な視点」を忘れずに、しっかり検討していただきたいと思います。

そこで最後にみなさんにお願いです。

検討委員会のメンバーがネットに公開されていますので、どなたかお知り合いがいらっしゃれば、ぜひ皆さんの声を伝えてほしいと思うのです。残り約3ヶ月。委員会のメンバーがカギとなります。僕たちの知らないところで決められて後で後悔しないように、今のうちにコンタクト取っていただければと思います。

障害児支援の見直しに関する検討会メンバー(PDF)

2008年4月24日木曜日

勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─

最近、ビジネス書が好きです。

僕が現在しているのは発達障害のある子と関わるお仕事ですが、それでもやはり仕事は仕事なわけで、ボランティアでしているのではなく、お給料をいただきながら働いているわけです。

要するに、ヒルズでクライエントと商談しようと、子ども相談室でお子さんと療育しようと、やっていることは自分のもつ専門性とお金を交換している意味で同じだと僕は思うのです。

福祉畑の人には「お金」や「ビジネス」や「利益」なんて聞くとそれだけで毛嫌いする方が残念ながらたくさんいらっしゃるのが現状ですが、僕としては同じ働く者同士、学び合うことができると思い、せっせとビジネス書を読みあさっているのです。

今日読み終えた本は勝間和代さんの「勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─」です。勝間さんは経済評論家としてだけでなく、家庭では3女の母であり、自転車ツーキニストでもいらっしゃいます。同じロードレーサー乗りとして、また家庭を持つ者として、個人的にとても共感している方です

「利益」の出し方そのものに関心のある方はしっかり本書を読んでいただくとして、僕にとって興味深かったのが、「これからの厳しい時代は、働く人それぞれがコスト意識をもち利益をあげるビジネスモデルに転換しないと、さらに少子高齢化がすすみ、日本人のライフ・ワーク・バランスがいっそう悪くなる」ということです。

これは福祉の世界にも言えます。

福祉の人もこれからはコスト意識をもたないと、どんどん安月給の長時間労働となり、新規職員の入らない職場となってしまいます。あるいは専門性のない人が集まる3K職場になってしいます(もうすでになっているかもしれませんが・・・)

福祉は人がやるものです。優秀な人が集まるような福祉モデルができない限り、職員は減るばかりで結果として利用者さんへの不利益になってしまうのです。

福祉の現場は、よくよく「利益」について考えないとと感じました。

恩師の死

今日、大学のころにお世話になっていた先生のお葬式が執り行われました。

先生は4年前にガンが見つかって、それでもずっと闘病を続けながら大学でも教えていらっしゃったそうです。本当に熱意のある方でした。

学生から見ると結構厳しい先生で、授業中、突然「ジェームズ・ランゲ説を説明しなさい」と当てられたことを覚えています。こんな不真面目な学生をよく気にかけてくれていました。

先生、お疲れ様でした。

2008年4月23日水曜日

服巻智子先生は何故あれほどまでに活動的なのか?

僕はNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」が好きで、子どもが生まれる前は良く見ていました。

ある日、ふとスタッフの住吉美紀さんのブログを読んでいたら、そこになんと服巻先生との裏話が載っているではありませんか!!他のエントリーと比べてもかなりの長文なため、住吉さんとしても服巻先生との出会いにググッとくるものがあったのだと思います。

その住吉さんの裏話を読んでいると、当たり前の事なんだけど、服巻先生もずいぶんと苦労されたんだなと思いました。それでも、あきらめず、途中で放り投げることなく、さらに最高のものを求めて勉強を続けるエネルギーはいったいどこから来るのでしょうか?そのへんをずばり住吉さんが服巻先生に聞いてくれています。

詳しくはブログを読んでいただきたいと思いますが、
あんなに穏やかな表情をされる服巻先生ですが、先生を自閉症支援に駆り立てる原動力の源泉には「怒り」があるのかな、と感じました。より詳しく言うなら、自閉症のある子の親を責め立てる社会の理不尽さについての怒りだと思うのです。

その怒りは、ひょっとするとTEACCH創設者のエリック・ショプラー先生もまた感じていたのかもしれません。

ショプラー先生は自閉症母原論渦巻く時代において、親を自閉症の原因ではなく共同治療者(co-therapist)として一緒に歩んでかれたわけですが、それはシカゴ大学での指導教官だったベッテルハイムへの反発であったわけです(「本当のTEACCHより」)。

僕自身、大学で心理学を学び、当時は臨床心理学まっさかりで僕もユングやフロイトなどを好んで勉強していました。自分で言うのも何ですが、本当にかなり真剣に勉強したのです。

しかし、一方で病因をその人の生育歴にもとめるような思考方法にいまいちついて行けない自分もいて、本当に心理学の道に進んでいいものかずいぶんと悩んだ時期がありました。

結局、大学中にボランティアでかかわっていた自閉症の子どもたちやご家族から、実体験として「自閉症の原因は親の育て方ではない」ことを教えられ、最終的にはこの世界に入ることになったのです。ずいぶんと遠回りしてきたわけですが・・・。

最近は「親の育て方が・・・」なんて白昼堂々と言う心理学者はすくなりなりましたが、それでもそれに近いようなコメントを聴くと、怒りを通り越して悲しくなります。まだまだそれくらい発達障害を現場から語れる人が日本には少ないのです。

服巻先生の怒りにとても共感する者として、ささやかながら先生の後を追いかけていきたいと思います。

2008年4月21日月曜日

滋賀県教育委員会が中高生対象の特別支援教育ガイドブック作成

MSNの記事より、滋賀県の教育委員会が中高生の発達障害のある生徒を指導するためのガイドブックを作成したそうです。
滋賀県、頑張っています。

ダウンロードして読むと、特別支援教育の考え方だけでなく、具体的な指導法、二次障害への対応、個別指導計画や就労まで網羅されており、中高生だけではもったいない。

というより、就労など将来の視点をもって、小学校から丁寧にみてもらうことが肝心と思うので、すべての学校の先生や発達障害児にかかわる方々にお勧めです。

こういう情報がオンライン上にあることがすばらしい!インターネット万歳。

2008年4月18日金曜日

今日の双子

昨夜から片方が風邪です。

せきと鼻水が止まりません。ゲホゲホいって寝られないので、抱っこして一緒にクッションで寝ました。

見ていて本当にかわいそうなんだけど、何度も何度も起こされると「いい加減にしてくれ!」と思っちゃうのです。

ごめんな。

ガイドヘルパー応援計画

子ども相談室は学童以降の子どもたちが放課後たくさん通ってきてくれていますが、最近はガイドヘルパーさんと一緒にくるケースが増えてきました。ヘルパーさんと公共交通を使いながら移動する経験は、家族とは違った関わりが持てて、自立に向けた機会として結構使えるのです。

しかしニードがある一方で、現場としては、知的障害や発達障害に必ずしも十分に理解のあるヘルパーさんばかりでないのが実情なので、親御さんとしてはヘルパー事業所の選択に頭を悩ませていると思います。

以前、区からもらってきた事業所一覧表を見せられて、「向井先生のお薦めに○を付けてください」と言われたことがありましたが、ちょっと無理でした・・・。だって表そのものが事業所名と電話と住所くらいでホームページも載ってないし、これじゃ選びようがないのです(東京以外もそう?)。

こういうときこそ民間の出番かもしれませんね。発達障害に強いヘルパー事業所のデータベースをオンライン上に構築することや、発達障害プロパーのヘルパーさんを養成するプログラムなどが今後求められるかな?と思います。

企画しようかしらん・・・

2008年4月16日水曜日

ブログ、引っ越しました

ようやくブログの引っ越しが完了。

前のブログはASAHI-NETのブログサービスを使っていたのだけれど、細かいところが使いづらく、最近ちょっと自分のブログから気持ちが離れ気味だったこともあって、思い切って変えることにしたのです。

ブログを初めて約2年。ブログを通して自分自身もいろいろなことを学ぶことができたし、また多くの先輩達とつながることができました。なのでせっかくここまで育った自分メディアをほっとくのももったいない!ということで、環境を入れ替えることで気持ちの入れ替えも狙ってみました。

今は双子の子育てで確かに気持ちの余裕がないですが、言い訳ばかりでもしかたないし、少しずつでもいいから、また一から出発したいと思います。

訪問してくれた方へ。

これからもよろしくお願いします。